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いろごとプリズム
第9章 放課後、小暮の焦燥
午後の授業は頭に入らなかった。サーヤは部活のない放課後、優奈を呼び止めて部室にこもり、昼休みの事情を話した。
「うっわぁ……それめっちゃ萌えるー!花見川くん恐ろしい子だね」
「でしょ……?変な汗かいたよ」
「そっか~。ていうか修人、そんなに詳しく小暮くんにのろけてたんだね……ふふふ。なんか恥ずかしいけどこれも萌えちゃうかも。私もサーヤに詳しく説明した方がいい?ねぇねぇ。さっきは屋上でね……、」
「いっ、いいよ、いいっ!!……だいたい、想像ついてるから」
「うふふっ。けど小暮くん、そんな耳年増になっちゃってるんじゃきっと頭の中ほんっとエロエロだね~。やっぱ推しだなー、そしたらダブルデートもできるし~。んー、でも花見川くんのそのドSな感じもいいよね~!いっそ3Pとかしてみちゃったら?」
「あのねぇ優奈っ!もう、他人事だと思って……」

優奈の携帯が鳴る。
「あ、もしもし修人?うん、今サーヤと一緒。え?……あ、あー!!うん、わかった!オッケー、じゃあ今行くねっ」
電話を切ると、優奈は身支度を始めた。
「じゃ、彼氏のお呼びがかかったから私行くね。これからラブホ行ってくるからっ!」
「へ、へぇー」
昼休みの短時間では飽き足らなかったのだろうか。実におさかんなカップルだ。
「それでさ、サーヤに伝言。小暮くんが音楽室で待ってるって」
「へっ!?なんで!」
「んー、なーんでかな~?いいから行ってきなよ!じゃあね~ん」
「優奈っ!?……もう」

いそいそと出て行く優奈の後から、仕方なくゆっくりとサーヤは音楽室に向かった。防音の重たいドアを開けると、小暮が椅子に座ってプリントを読んでいる。
「ああ、高岡。来てくれたんだ。悪いな急に呼び出したりして」
「うん、優奈から聞いて……。えっと、何だろう?ていうか、その紙ってまさか……」
「そのまさかだよ。さっきあの一年に渡されたやつ……、全部読んだ」
花見川が書いた『桃色に熟れた純情』だ――。小暮は席を立ち、サーヤの近くへと歩み寄ってくる。
「あのさ……、高岡、こういうの読むんだ……?」
「え、あ、うんっ……、だってさ花見川くんに渡されて、」
「でも、読んだんだろ?それで、……興奮したんだろ?」
小暮の瞳が妖しく光る。いつもの小暮くんじゃないみたい……とサーヤは思った。
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