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いろごとプリズム
第2章 悠真の部屋で
「サーヤ、どこまで進んだ?」
「えーとね、お城が闇に包まれたとこ」
「えー、まだそんなとこかよ。もっと進めよ、オレその次の中ボスもう倒した」
「悠真が進み過ぎなんじゃないのー?ちゃんと学校行きなよ」
「……うるせー」

これは、いつものこと。ショウマの弟であり、同じく隣人の住人である、神山悠真とサーヤは、ゲーム仲間。ショウマの彼女として家に出入りするようになってからずっと、兄公認でこんなやりとりをしている。兄の帰りを待つ間、悠真の部屋で一緒にゲームを楽しんでいる関係。

サーヤにとって悠真の部屋は、落ち着ける居心地のいい場所だ。母親のいない神山家では、悠真が家に一人でいることが多い。サーヤの家に帰ってもまた、多忙な両親が不在がちなため、悠真の部屋で過ごす時間がいつしか増えていっていた。

「オレ早く次の曲仕上げちゃいたいんだよね。だからこのゲーム早くクリアしたい」
「また新曲できたんだ?すごいね」
悠真はボカロP、ボーカロイドの楽曲制作者『カミマP』として地道な活動を続けている。大ヒットこそないものの、そこそこ人気が出てきている。高校二年の彼はあまり学校に行かず、遊びに出るわけでもなく、部屋にこもっている事が多い。いわゆる引きこもりに近いものがあるのかもしれないが、本人いわく、家事もやってるしボカロPだからいいんだ、との事。

「……今度の曲は自信ある」
「どんな曲?」
「切ない片想いの歌」
「へぇ……珍しいね。悠真がラブソングなんて」
今までカミマPこと悠真が作ってきたのは、世界の終焉や人体の不思議や人の死を描いたようなシュールな作品……、いわゆる中二病系ばかりだった。
「悪いか、オレがラブソング作っちゃ」
「べつに……、ただ、意外だなって」

悠真の色恋沙汰って、そう言えば聞いたことがない、とサーヤは気付く。自分にとっては弟みたいな存在の彼だけど、一般的に見ればかなりのイケメンだとは思う。ショウマとは兄弟だとわからないぐらい似ていないけど、それぞれが違ったタイプのイケメンだ。
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