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いろごとプリズム
第11章 ショウマのリビドー
気付かれたのか気付かれなかったのかは、わからない。そっと持って来たサーヤの服を手渡すと、サーヤは黙って着ながら涙を流した。
「……なんだよ、何泣いてんだよ」
「ごめんね、ショウマ君……。明日会ったら、別れようって言うつもりだったの……。もっと早く、言えばよかった……」
ショウマはもう、こんな自分が好かれるわけがないと、覚悟していた。
「……いいよもう。わかったからこれで終わりにしよう」
サーヤは声をあげることもなく、涙を流し続けている。
「ごめんなさい……」
「鬱陶しい、何度も謝るなよ」
「私、ショウマ君のこと何もわかってあげられてなかった……。もっと、ショウマ君が、自分の気持ちをきちんとさらけ出すことができるような彼女でいれば、私……っ」

「……もういいって言ってるだろ!俺が悪いんだよ、サーヤを独り占めしたくて不安で不安で堪らなくて、けどそんな自分をお前に見せて嫌われるのが怖かったんだ……っ!もうわかっただろ、俺はこんなに情けない男だ。小さい男だよ!怒りと嫉妬にまみれて犯してしまうような最低の男なんだよ……っ!捨てられて当たり前だろっ……!」

自暴自棄にそう言い放つショウマに、サーヤは切なさで一杯になった。

「……ショウマ君がそうやってありのままでいてくれたら……私、きっともっと好きになってたと思う……。今日、会えて良かった……。今日があったから、ショウマ君のこと……ちゃんとわかることができたと思う……。ごめんね、今までありがとう。……さよなら」

「待てよっ!」
部屋から出ようとするサーヤを、ショウマが呼び止める。
「……悠真の女に……なるつもりなのか?」
「悠真とはしばらく会わない。あわす顔がないもん。……だから、私のことでもう喧嘩しないでね」
「……わかったよ。俺も……、いろいろごめん」
ショウマはサーヤの最後のお願いを聞きいれた。三人とも胸が張り裂けそうな想いを抱えた、重たく長い夜だった。
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