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いろごとプリズム
第16章 バスルームの二人
どれぐらいキスをしていただろう。触れ合うだけのキス、ついばむようなキス、そして舌を絡め合うキス……。長いことそれを繰り返して、服を着たまま性行為にまで及ぶことなく、思いが通じ合った喜びに浸っていたふたり。ずっとこうして抱き合ってキスをしていれば、それだけで幸せ、もう何も要らない……、サーヤはそう思っていた。けど、男子たるもの、そうはいかない。

「なぁ……、今日こそ、最後まで……、いい?」
甘いその囁きが欲望を物語り、眼差しも熱を帯びてきている。サーヤはまるで初めてのことのように照れくさく感じる自分を可笑しく感じた。今まで悠真と、いろんな行為をしてきているし、他の男達とだって……。なのに、まるで処女のような気持ちで、胸をかき乱されている。
「うん」
小さく一言そう返したものの、物凄い緊張に包まれ始めた。
(とうとう、悠真と……。嬉しい、けど、どうしたらいいのかわかんないっ……)

そしてそれは、悠真も同じだった。今までのように大胆に手を出すことがどうも出来なくてぎこちない。どんな手順で脱がしたらいいのか、頭の中が混乱している。
「……っ、バカみたいだなオレ……。なんか、緊張してる」
「え……、私もだよ」
顔を見合わせて笑うふたり。
「ちゃんと両想いになって……初めてだからなのかな」
「うん、そうかもしれないね」
「オレ……、こんなに好きな人とセックスするの初めてだし」
「……そう言ったら、私もそう」
妙な間があき、鼓動の高鳴りを実感させられる。

「やべぇな……、調子出ない……。そうだ、風呂入らねぇ?」
「えっ!?」
悠真の唐突な提案に驚くサーヤ。
「とりあえず一緒に風呂入ろうぜ。今までのことも全部綺麗サッパリ洗い流して」
「うん……わかった」
「じゃあお湯張ってくるからちょっと待ってろ」
悠真はそそくさと浴室へ行き、お湯を張って脱衣所でタオルの用意をしたり、トイレに行ったりと落ち着かずに動いた。サーヤは悠真の部屋でひとり、これから起きることに想いを巡らせ、胸のドキドキを抑えられずにいた。
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