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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第3章 LessonⅢ 悪意ある噂
 言い終えたその瞬間、エレベーターの扉が開いた。人事課のある六階に到着したのだ。
 だから、気を付けてね。佐枝はしまいは聞き取れないような小声で言うと、何事もなかったような表情で澄まして先に降りていった。後は振り向きもせずに廊下を歩いてく。颯爽と水色のスーツを着こなし、ヒールの音を響かせて行く姿は、ある意味ではOLの模範といえるかもしれない。
 〝情報屋〟と呼ばれて全社員から畏怖され、或いは嫌われている佐枝。そんな佐枝が何故、自分に好感を―少なくとも、あの口ぶりでは悪意は抱いていないように思えた―持ってくれているのか。よくは判らなかったけれど、意外なところで佐枝が見せた好意的な態度に、輝は少しだけ救われたような気がした。
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