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遅咲きのタンポポ
第13章 2年越しの想い
駐車スペースに車を停め、エンジンが止まる。

私は一言も発せないでいた。

高校を卒業してから一人暮らしだったこともあって、この手の場所には縁が無くて。

友達から聞いたり、映画やテレビドラマで見たりした知識しか、ない。

すごく緊張する。

固まったままの私に、武井さんが不安そうに声を掛ける。

「あの…沙織ちゃん…?もしかして…イヤ?」

「え、いえ、そうじゃ、無くて…」

「そりゃ、ここまで来て拒まれたらやっぱショックだけど。でも、沙織ちゃんが本当に嫌なら、無理強いはしない。帰る?」

私はふるふるとかぶりを振る。

「あ、場所がダメ?夜景の見えるシティホテルが良かった?」

…そう言われたら、そっちの方がまだここまで緊張しなかっただろうか?
いや、同じか…

「沙織ちゃんがそっちのがいいなら、場所変える?…俺は、どっちかっていうとこういう所の方が気が楽というか…」

「そうなんですか…?」

「シティホテルって、部屋が幾つかあるグレードの高い部屋ならともかく、スタンダードな部屋だと、結構壁越しに周りに音とか響くし。
その点、ココは目的に特化してる分、防音もしっかりしてて安心出来るっていうか。
風呂とかもシティホテルは大概オールインワンユニットで、シャワーくらいしか使えないけど、ココは風呂もでかいし。窓がないくらいで、室内は結構快適だよ…?」

そうなんだ…

「武井さんが、そう言うなら…こういう場所が初めてなので、緊張しちゃって…イヤとかではないんです」

武井さんはホッとしたように笑って。
「良かった。帰るって言われたらどうしようかと思った。」
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