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遅咲きのタンポポ
第9章 はじめて
武井さんと、梶井さんと言うらしい運転手さん?は、二人で荷物をトランクに積み、梶井さんは空いたカートを戻しに行った。

その後、二人が乗り込み、車は出発する。

武井さんは後部座席で、ずっと私の肩を抱いたまま、優しく髪を撫でてくれた。

「沙織ちゃん、今日、来てくれてありがとう。本当に嬉しい。ずっと会いたかったんだ。」

そして、声のトーンをグッと落として、
運転席の梶井さんに聞こえないように、
私の耳元で、
「もう、我慢しないからね?」
と囁く。

顔が熱くなるのを感じた。

私が、口をパクパクさせて、言葉を発せないでいると、
その反応を楽しむようにクスッと笑う。

「あ、梶井さん、どっか百貨店寄ってくれる?」

「お買い物ですか?」

「さっき彼女の靴の踵が折れたんだ。
だから靴買いに行くから。」

「承知しました。」

梶井さんは運転をしながら、カーナビか何かのディスプレイを触って操作した。

『レクサスオーナーズデスクに接続します』

「梅田近辺の百貨店で、女性物の靴を買いたいんですが…」

「かしこまりました。梅田近辺の百貨店で、女性物の靴、でございますね。少々お待ちください…
梅田の阪神百貨店でしたら、シューフィッターが常駐しております。また、売り場面積と品揃えでは阪急百貨店をお勧めいたします。」

女性のオペレーターの声がした。




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