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素直になれなくて
第8章 波乱と別れ
田坂の葬儀は、社葬という形で執り行われた。
悠里は、葬儀の間泣かなかった……泣けなかった。
田坂の死を受け入れられず、抜け殻の様になっていた。
「悠里、大丈夫?」
葬儀が終わって、恵美は悠里をマンションに送っていった。
「悠里…着替えて。」
恵美は、悠里に部屋着を渡す。
着替えを済ますと、目を開けたままベットに横たわる。
「悠里…眠れてるの?」
「ん。」
目の下のクマは、その嘘を隠せないでいた。
「少しは寝なさいよ?私、着替えたらまた来るから。」
そう言って、恵美は部屋を出た。
マンションから出ると、浅井が立ち尽くしていた。
「浅井……」
「悠里は……大丈夫か?」
「……抜け殻よ。抜け殻。」
恵美は、深い溜息を吐いた。
「彼奴、泣いてなかった。」
浅井は、ボソッと呟く。
「ん、だから余計に心配なんだけど。」
「……そうだな。」
浅井は、ポケットに手を突っ込んで、壁に寄りかかった。
恵美は、そんな浅井に視線を向けた。
恵美は、田坂が亡くなってから、浅井の悠里への態度に違和感を感じていた。
「ちょっと、顔貸してくれる?」
恵美は、マンションの向いのカフェに浅井と入ると、俯いている浅井に言った。
「……変だよ。浅井。」
「ん?」
「あの日から、悠里に触れてないでしょ?」
浅井は、ゆっくり顔を上げると、恵美を見つめた。
「ああ。」
「支えてあげないの?」
恵美は、俯いたままの浅井に言った。
「怖い……んだ。」
「……怖い?」
恵美は、怪訝そうな顔をする。
「悠里に……触れていいのか、わからない。」
「……浅井……」
「田坂のモノなのに……悠里は、田坂の……」
浅井は、頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
田坂に、散々嗾けて来た。
お前が居なくなったら、俺が悠里を貰うって。
だけど……いざいなくなったら……
「あの時、俺が車を取りに行かなければ……田坂は、無事だったかも知れない。もしかしたら、俺が先に飯島に気が付いていれば、何も起きなかったかも知れない。刺されていたのが、俺だったら……俺だったら良かったのに……」
パシンっ!
浅井は、恵美に平手打ちされた。
恵美は、唇を噛み締めて言った。
「あんた、馬鹿?」
「桜庭…」
「かも知れないの話をしても、何も変わらないのっ!今の悠里を支えられるのは、あんただけでしょ?何年指咥えて見てたのよっ!この後に及んで尻尾巻いて逃げるのっ!」
悠里は、葬儀の間泣かなかった……泣けなかった。
田坂の死を受け入れられず、抜け殻の様になっていた。
「悠里、大丈夫?」
葬儀が終わって、恵美は悠里をマンションに送っていった。
「悠里…着替えて。」
恵美は、悠里に部屋着を渡す。
着替えを済ますと、目を開けたままベットに横たわる。
「悠里…眠れてるの?」
「ん。」
目の下のクマは、その嘘を隠せないでいた。
「少しは寝なさいよ?私、着替えたらまた来るから。」
そう言って、恵美は部屋を出た。
マンションから出ると、浅井が立ち尽くしていた。
「浅井……」
「悠里は……大丈夫か?」
「……抜け殻よ。抜け殻。」
恵美は、深い溜息を吐いた。
「彼奴、泣いてなかった。」
浅井は、ボソッと呟く。
「ん、だから余計に心配なんだけど。」
「……そうだな。」
浅井は、ポケットに手を突っ込んで、壁に寄りかかった。
恵美は、そんな浅井に視線を向けた。
恵美は、田坂が亡くなってから、浅井の悠里への態度に違和感を感じていた。
「ちょっと、顔貸してくれる?」
恵美は、マンションの向いのカフェに浅井と入ると、俯いている浅井に言った。
「……変だよ。浅井。」
「ん?」
「あの日から、悠里に触れてないでしょ?」
浅井は、ゆっくり顔を上げると、恵美を見つめた。
「ああ。」
「支えてあげないの?」
恵美は、俯いたままの浅井に言った。
「怖い……んだ。」
「……怖い?」
恵美は、怪訝そうな顔をする。
「悠里に……触れていいのか、わからない。」
「……浅井……」
「田坂のモノなのに……悠里は、田坂の……」
浅井は、頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
田坂に、散々嗾けて来た。
お前が居なくなったら、俺が悠里を貰うって。
だけど……いざいなくなったら……
「あの時、俺が車を取りに行かなければ……田坂は、無事だったかも知れない。もしかしたら、俺が先に飯島に気が付いていれば、何も起きなかったかも知れない。刺されていたのが、俺だったら……俺だったら良かったのに……」
パシンっ!
浅井は、恵美に平手打ちされた。
恵美は、唇を噛み締めて言った。
「あんた、馬鹿?」
「桜庭…」
「かも知れないの話をしても、何も変わらないのっ!今の悠里を支えられるのは、あんただけでしょ?何年指咥えて見てたのよっ!この後に及んで尻尾巻いて逃げるのっ!」