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素直になれなくて
第9章 愛の行方
「今日からは、悠里もビックリの育メンになるからな?」
「もう…十分驚いてるよ。浅井。」
悠里は、そっと浅井の肩に凭れかかる。
浅井は、悠里の頭を優しく撫でた。
「悠里、愛してる。」
そう言うと、浅井は悠里の唇にキスをした。

それからの一週間は、目まぐるしかった。
悠里はパートを辞めて、アパートを引き払い、浅井のマンションへ引っ越しをした。
今日は、浅井に連れられて、3年ぶりに職場へ挨拶に出向いてた。
「悠里っ!」
恵美が駆け寄って、悠里を抱きしめた。
「この馬鹿っ!大バカ者っ!」
「ごめん…本当にごめんね。」
「何でこんな…痩せちゃって…」
恵美は、悠里の頭を撫でながら、言葉を詰まらせた。
「でも、何で姿を晦ましてたの?」
「原因は、こいつだよ。」
浅井の声がして、恵美は振り返り、目を丸くした。
「え?田坂の……」
浅井の腕に抱かれた小さな男の子を見つめて言った。
「ああ、田坂のミニチュアみたいだろ?」
恵美は、浩斗のホッペをフニフニ触りながら、涙を流した。
「田坂が帰って来たみたい。悠里……良かったね?」
悠里は、頷きながら笑顔になった。
「名前は?」
「浩斗だよ。田坂と俺から一文字ずつ付けたんだと。」
浩斗は、浅井のホッペを触りながら、ニコニコしている。
「なんか……メッチャ懐いてる。」
「当たり前だろ?俺は育メンパパだからな?」
「なー。」
浩斗は、浅井の真似をして言った。
恵美は、幸せそうに笑う浅井を見て、優しく微笑んだ。
「浅井、本当に良かったね?」
「ああ。」

「あーっ!山城っ!」
「高野部長。」
「山城っ!良かったぁ……無事で。本当に……良かった……」
部長は、何故か泣きそうになりながら、言葉を詰まらせた。
「で、何時から復帰出来るんだ?復帰してくれるんだよな?浅井のお守りが出来るのは、山城しかいないんだよ。」
何だよ、それ……
浅井は、複雑な顔をしながら、苦笑いした。
「部長…悠里は育休中という事で。」
そう言った浅井を見て、口をパクパクさせた。
「浅井?いつの間に子供が出来たんだ?」
浅井も悠里も恵美も、顔を見合わせた。
「だから部長、こいつは田坂の置き土産ですよ?」
「あ、あーっ、本当だよ。田坂だ。そっくりだぁ〜。」
部長は、浅井の肩を叩きながら、泣き笑いしていた。
「部長、あの時は突然の退職、大変失礼しました。」
悠里は、部長に頭を下げた。
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