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素直になれなくて
第9章 愛の行方
「え?何?」
「もう、浅井ってば、女同士の話だから。ねーっ、悠里っ!」
悠里は、顔を真っ赤にしている。
「なんだよ。ケチだなぁ。」
浅井は、頬を膨らませてイジけてみせる。
「ま、後は悠里から教えて貰いなさい。」
「ちょっと、恵美ちゃん?」
「じゃ、私、駅こっちだから。」
そう言うと、恵美はニヤニヤしながら、手を振って反対方向へ歩いて行った。
「恵美ちゃんの裏切り者……」
悠里は、恨めしそうに恵美の後ろ姿を見つめた。
「で?なんの話をしてたの?」
そう言って、浅井は、悠里の顔を覗き込んでくる。
「えっと……秘密。」
「あ!秘密は無しだよ。」
「だって……やっぱり秘密だよ。」
浅井は、立ち止まって、悠里の腕を掴んだ。
「わかった。後で白状させてあげるから、覚悟しておけよ?」
何を企んだのか、ニヤニヤ笑いながら歩き始めた浅井の手を悠里は優しく握りしめた。
浅井は、少し頬を染めて嬉しそうに笑った。悠里も、見つめて優しく微笑んだ。

「こら、浩斗、暴れるなよ。」
「くすぐったいの。」
バスルームから、賑やかな声が聞こえて来る。
夕飯の支度をしながら、悠里は2人のやり取りに耳を傾ける。
「よしっ!じゃシャボン玉作ろうぜ。」
「わーいわーい!」
「デッカいの作るからなぁ。」
悠里は、クスクス笑った。
鍋の火を止めて、バスルームにタオルを持って向かう。
「ご飯、準備出来たよ?」
「はーいっ!」
バスルームの中から、元気な声が聞こえて来る。悠里は、クスクス笑ってバスタオルを置いた。
リビングに戻って盛り付けた料理をテーブルに並べた。
「うわー、美味そうっ!」
「あ、ハンバーグっ!ぼく好きっ!」
「あ、こら浩斗、もうちょっと頭拭けよ。」
「んーっ」
飛び回る浩斗を捕まえると、浅井はバスタオルで頭を拭いてやる。
「よしっ!終わり。」
テーブルに着くと、みんなで揃っていただきますを言った。
「本当に、悠里、料理上手いよな。」
「ママテンタイだから。」
「それを言うなら、天才だろ?」
「テンタイ?」
浅井は、浩斗の頭をワシワシ撫でた。
「てんさい。そのうち言えるようになるからな?」
浩斗は、口をモゴモゴしながら、一生懸命練習している。
悠里は、クスクス笑った。
「浩斗、食べないと冷めちゃうよ?」
「あ、はーい。」
浩斗は、ホークでハンバーグを刺して口に運んだ。
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