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素直になれなくて
第2章 同期の気持ち
浅井は、マンションに着くと、カギが開いていたので、少しホッとする。
玄関を開けると、いい匂いがした。
「え……」
テーブルの上に、食事が用意されていた。
「美味そう。」
浅井は悠里の姿を探した。
ベットルームに行くと、布団に包まって寝ている。
浅井は、悠里の側にゆっくりと腰を掛け、頭を撫でた。
愛おしそうに見つめた。
「ん……」
悠里は寝返りを打つと、ゆっくり目を覚ました。
「ごめん…起こした?」
「ん…おかえり。」
寝ぼけ眼の悠里は、目を擦って起き上がる。
「食事、用意してくれたの?」
「うん。あ、マスクして作ったから、大丈夫だよ?」
ははっ、気にしないよそんな事。
浅井は笑いながら、体調は?と悠里に聞く。
「うん、もうすっかり良い感じ。」
「そっか、良かった。」
ベットから立ちながら、悠里に言った。
「悠里は?食べないの?」
「浅井の作ってくれたお粥、温めて食べた。」
「味、大丈夫だった?」
悠里はニッコリ笑って言った。
「美味しかったよ。」
浅井は悠里の笑顔に心が暖かくなった。
「お茶でも入れるから、こっち来いよ?」
「うん。」
悠里がベットから降りると、浅井が顔を赤くする。
「ん?何?」
「いや、何でもない。」
男物のTシャツ1枚の姿に目のやり場を失った。
色っぽい…なんて言ったら怒られるだろうな。
ニヤける口元を手で隠しながら、悠里から目を反らした。

「本当、お前料理上手いな?」
「そうかなぁ。普通だと思うけど。」
「悠里の普通はレベルが高い。」
悠里は不思議そうな顔をしながら、お茶をすすった。
「今日は、外回り大丈夫だった?」
「田坂を連れて行った。」
悠里の顔色が変わる。浅井はその事に気付き、
「そんな顔するな…」
と言った。
「飯島家具は、追い帰えされた。」
「そっか…」
俯く悠里に浅井は言った。
「田坂……俺の二の舞踏んだんだって?」
悠里は、視線を下に向けたまま、コクリと頷いた。
「……ごめん……」
「なんで謝るんだよ?」
悠里は、顔上げて浅井を見つめる。
そして、もう一度ごめんと呟いた。
悠里は、浅井にどっぷり甘えている事を自覚していた。
それを、浅井が許してくれている事も。
悠里は、泣きそうになって俯いた。
「似てたんだよね……田坂くん……」
ポツリと言う。
「誰に?」
「亡くなった滝島に…」
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