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第4章 過去の

悠里は、出勤してすぐ、外回りの準備を始めていた。
「今日、浅井さん有給なんですか？」
田坂が、悠里に声をかけた。
「うん、そうなの。」
悠里は、鞄に資料を入れながら答えた。
「今日、悠里先輩外回りですよね？」
「そ、今日は店舗回り。」
「オレも連れて行ってくれませんか？」
「あ、そっか、じゃそうする？」
「お願いします。」
じゃ、5分で準備して？
そう言うと、悠里は鞄とジャケットを持った。
恵美がニヤニヤしている。
「どうしたの？」
「え、浅井がヤキモチ妬きそうだなと。」
「からかわないでよ。」
そう言うと準備を終えた田坂と一緒にフロアを後にした。
「悠里先輩、最近田坂と仲良いですね。」
そう呟く麻里を見て、恵美はハッとした顔をした。
「もしかして、麻里ちゃん、田坂の事好きなの？」
「まさか、私が好きなのは……」
そう言うと、携帯の待ち受け画面を見てため息を吐いた。

「こんにちはー」
「あ、悠里さん！いらっしゃい！」
「店長、なんか髪型変えました？」
「あ、嬉しいなぁ、そういうの気付いてくれるの悠里さんだけですよ。」
田坂は驚いていた。悠里は各店舗の店長を始め、従業員の名前を全て覚えている。そして趣味や家族構成まで把握して、最近の近況を聞いていく。
「え、お子さん生まれたんですか？おめでとうございます。」
そんな他愛も無い話をして、さりげなく店舗の様子を確認し、報告をもらう。
「じゃ、本社に確認して、また追って連絡しますね。」
挨拶をすると、店舗を後にする。
店を出ると、悠里はメモを取り出し、何かを記入している。
「何、書いてるんですか？」
「ん、店長に女の子のお子さんが生まれた事と後ね」
店で聞いた事を些細な事でも書き留めておくという。
「すごいな……」
「感心している場合じゃ無いよ？田坂くんもまず、各店舗の店長の名前を覚えてね？」
「はい。」
「帰ったら、壁の補修の件とイスの破損の件、報告書お願いします。さっき、写真撮ったよね？」
「はい、大丈夫です。」