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素直になれなくて
第4章 過去の
悠里は、田坂を真っ直ぐに見つめた。
「私たちは、各店舗の店長さんとかスタッフさんが働きやすいように動いているだけ。頑張ってるのは各店舗の人達だよ?みんな凄く努力している。」
田坂は、にっこり微笑んだ。
「そうですね。」
「まあ、確かに浅井の顔の広さには感心するけど。ほら、浅井って人懐こっいから、業者さんと仲良くなるのも凄く上手くて……そういう所も、営業に向いてるんだよね。」
少し寂しそうに笑った。
「なんか、元気ないね?」
悠里は、首を傾げて田坂を見つめた。
「……浅井さんに戦意喪失しそうで……」
「…ん?…」
「この前、浅井さんと外回り行った時も、凄く感じたんです。その…2人の信頼関係が……すごいなって。」
「営業職について、2年一緒に動いてるからね。互いの癖とか、やり方とか……わかってるからね。」
田坂は、俯いて拳を握りしめた。
「浅井さんは、仕事も出来て大人で、悠里先輩への愛情も半端なく溢れてる。悠里先輩……浅井さんといた方が幸せになれるのかな……なんて。」
悠里は、何故かイラっとした。
田坂の顔をまじまじと見つめた。
「……本気で……言ってるの?」
「あ……えっと……」
悠里は、深い溜息を吐いた。
「…そうかもね……」
悠里先輩、怒ってる?
「あ、悠里先輩?」
「…なら、浅井にするよ。」
「え?」
悠里はスッと立ち上がり、定食代をテーブルに置くと店を後にした。
私、なんでこんなにイライラしてるの?
悠里は、店を出て、早めていた足を止めて立ち止まった。
ぐちゃぐちゃだ。私の心の中。
滝島を忘れられないって断ったのに……
田坂にあんな風に言われた事に腹を立てていた。
「浅井との方が幸せになれるって……なんなの?」
じゃあ、私のこと好きだって言ったのは……そんな適当な気持ちだったの?
人に譲れてしまうほどの……そんな軽い気持ちだったの?
「……私……変なの。なんでこんな……イライラ……」
幸せにするって……浅井より……幸せにするって……言って欲しかったのか……
「……なんて欲張りなの……私……」
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