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素直になれなくて
第4章 過去の
「ね……くすぐったい。」
「あ…ごめん!」
慌てて悠里の胸から手を外すと、浅井は耳まで真っ赤になった。
「あの…俺は……」
「大丈夫、キスとその先少しされたけど、後は何もなかったから。」
「その先…って……」
「……恥ずかしいから、言わない。」
そう言うと、悠里は乱れた服を直し、ベットから起き上がる。
「覚えてない……勿体無い……」
「えっ?」
「あ…いや、なんでもない。」
「キッチン、借りるよ?」
「ああ。」
「シャワーでも浴びて来たら?」
そう言うと、悠里は朝ごはんの準備を始める。
浅井は、バスルームに行き、シャワーを浴びると、考えを巡らせた。
キスとその先って……俺は何をしてるんだ。
起きた時に、悠里の胸を触ってた。柔らかかった。
浅井は覚えてない自分に歯がゆさを覚えながら、何か悠里に言われた様な記憶があるが、はっきり覚えていない事に、焦りを感じた。
「ちょっと、服着なよ!」
ついいつもの癖で、腰にタオルを巻いて悠里の前を歩いてしまい、怒られた。
「ごめん、ごめん。」
真っ赤になる悠里が可愛くて、ワザとゆっくり目の前を歩く。
「馬鹿っ!」
不貞腐れている悠里は、お味噌汁をお椀に注いで、朝食を並べた。
「美味そう。」
シャツを着て、席に座るとご飯をよそってくれる。
「悠里、嫁に来て?」
「もう。ご飯を目当てですか?」
「ははっ、それだけじゃないけど。」
そんな話をしていると、急に悠里は真面目な顔で浅井を見つめた。
「浅井……何かあった?」
「え?」
「珍しく、あんなに酔ってたから。」
「……ま、飲みたい気分だったんだよ……」
浅井は話をはぐらかした。
「で、なんで悠里がここに居るんだよ?」
「店主から連絡が来たの。浅井が酔って寝ちゃったから何とかしてくれって。」
そう言うことか。
「……ごめん……」
「別に良いけど。私もこの前、迷惑掛けたから。」
悠里は、そう言うとお茶を入れてくれる。
「なんかさ、昨日、悠里に何かを言われた気がしたんだけど。」
「なっ……何も言ってないよ……」
悠里は頬をピンクに染める。
「怪しい……なんだよ?愛の告白でもしてくれたのか?」
「してないよ!」
「あ…全否定……傷つくなあ……」
悠里は真っ赤になって、立ち上がった。
「もう、酔った勢いで抱くなって言ったの!……もう…帰る!」
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