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素直になれなくて
第6章 暴露
悠里は呆れた顔で、浅井を見ていた。
「良いんだよ。悠里の物は俺の物なんだよ!」
「はあ?訳分かんないですよ?」
「上手くいったんだな?」
浅井が唐突に田坂に向かって言った。
急に話題が変わって驚いていると、浅井はもう一度言った。
「全てを話して、上手くいったんだな?」
「はい。」
田坂は、浅井を見て言った。
「なら、良かった。」
そう言うと、悠里の頭を撫でた。
「悠里、良かったな?」
「な……え……どういう事?」
「まあ、良いじゃないか?な?」
悠里は、全てを知ったように話す浅井に戸惑いながら、頬をピンクに染めていた。
浅井は席を立つと、2人に言った。
「仕事のコンビは譲らないからな!じゃ、先行く!」
ニッと笑って、浅井は店を出て行った。

「なんで、浅井、知ってるの?」
「この前、浅井さん有給取った時、オレの事調べに長野に行ってたんですよ。」
悠里は目を丸くして驚いた。
「浅井……なんで…」
「オレの墓参りさせようとしていたみたいです。生きてたけど。」
悠里は、浅井の気持ちを察した。
「優しいよね、浅井さん。悠里の背中を押してやりたかったんだと思う。」
悠里は、優しく微笑んだ。
「そうだね。」
「オレ、怒られたんだよ。浅井さんに。」
「え?」
「死ぬ、死ぬってビビっるなって。悠里の為に、絶対に生きてみせろって。」
「……浅井……」
悠里は、浅井がどんな思いで田坂の背中を押したのか、思いを巡らせた。
「目が覚めた。浅井さんのおかげで。だから、悠里に話せた。浅井さんのおかげなんだ。」
ああ、あの日。浅井が珍しく酔っ払ってしまったあの日。
『酔いたい気分だったんだよ。』
そう言っていた浅井の顔が浮かんで、悠里は泣きそうになった。
「いい奴なんだ。浅井……」
田坂は、悠里の手を握りしめた。
「でも、渡さないよ?」
悠里は、優しく微笑んだ。
「ん……わかってる。」
田坂は悠里の唇にそっと唇を重ねると、優しく見つめた。
「浅井さんに負けないから。幸せにする。」
悠里は、頬に伝う涙をそっと拭うと、コクリと頷いた。
「そろそろ行こうか?遅刻する。」
「うん。」
そう言うと、2人は店を後にして、会社に向かった。
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