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素直になれなくて
第7章 事件
マンションに着いて田坂の部屋へ向かうと、とりあえず悠里をベットへ運んだ。
リビングに行って、テレビのスイッチを入れる。冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出した時だった。
「嫌ぁーーーーっ!」
悲鳴が聞こえて、田坂は焦ってベットルームに入る。
「悠里っ!」
悠里の側に駆け寄ると、震えている悠里を強く抱きしめた。
「悠里、大丈夫。もう大丈夫だから……」
優しく背中を摩る。
悠里は肩を震わせて、大粒の涙が頬を伝っていた。
田坂は、悠里が落ち着くまで、そのまま抱きしめていた。
「……ヒロくん…」
悠里は少し落ち着いて来ると、田坂の顔を見上げた。
「怖かったな…ごめんな……」
こんな事になるなら、里内の件を悠里にも忠告しておくべきだった。
「私…」
「大丈夫だよ……」
そう言うと、悠里の手首をゆっくりと手に取ると、キスをする。
「ロープで縛られてたから、少し傷になってるね……」
「……麻里ちゃん…どうして……」
「アイツ、悠里の事、恋愛の対象として、好きだったんだ。」
抱きしめたまま、悠里の髪を撫でた。
「俺と付き合い出したから、きっと焦ったんだ。」
「……そんな……」
「単なる憧れなのかと思って見過ごした、オレの責任だよ。」
悠里は首を振り、潤んだ瞳で田坂を見上げる。
「怖い思いさせて、ごめん。悠里。」
「謝らないで……」
悠里は、田坂の背中に手を回すと、抱きついた。
「……大丈夫……私。ちょっとビックリしただけだから……」
悠里は、まだ震えていた。
「我慢しないで…悠里…泣いていいんだよ。」
「ん……」
悠里は、田坂に抱きついたまま、いっぱい泣いた。
可愛い後輩だと思っていた里内がまさかと思った。
脅迫メールを送ったのも、間違いなく里内だった。
悠里は里内をそこまで追い込んでしまったと、自分を責めた。
どうしたら、良かったのか……
「抱きしめてあげられたら良かったのかな……」
でもあの状況では、とてもそんな余裕はなかった。
「悠里は優しいな。」
田坂は、里内を許せなかった。
里内の愛は歪んでる……
そう思えてならなかった。
「麻里ちゃんは、どうなったの?」
「まだ、捕まってない…」
悠里は戸惑った表情を浮かべる。
「…悠里心配するな…」
田坂は、悠里を強く抱きしめる。
浅井から、暫く気をつけろよと言われた事を思い出す。
「守るから…」
田坂は、悠里に優しくキスをした。
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