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素直になれなくて
第7章 事件
病院に到着すると、悠里は集中治療室へ運ばれた。
田坂も、別室でレントゲンなどの検査をしていた。
「間に合わなかった……」
浅井は、会社の入口を入った時、階段の上の人影が里内だとわかった。
駆け寄ろうとした瞬間、事は起こってしまった。
田坂の背中を悠里が抱えるようにして、階段を落ちていった。
心臓が抉られるようだった。
「ありがとうございました。」
処置室から田坂が出てきた。顔色が最悪だった。
「大丈夫か?」
「悠里を巻き添えにしてしまいました。」
田坂は肩を落として、俯いている。
「お前の怪我は?」
「ただの肩の骨折です。」
「そうか。」
「悠里は……」
「まだだ。」
田坂は、頭を抱えるようにして項垂れた。
「守るって言ったのに……」
「不可抗力だ。仕方ない…」
浅井は田坂の頭をワシワシと撫でた。
「浅井くん!」
恵美と、恵美から報告を受けた部長が駆けつけて来た。
「悠里は?」
浅井は首を振った。
恵美は力なく、椅子に座り込んだ。
部長は、会社に連絡をすると言って、一旦外へ出て行った。
集中治療室のドアが開いて、先生が出て来た。
「あ、悠里は!」
田坂は、先生に食らいつくように駆け寄った。
「頭の出血が多かったですが、骨と脳の方は大丈夫でした。身体は打撲と足首の骨折ですね。腰や首の骨折とか心配したんですが大丈夫そうです。落ち方が良かったのかな。ただ暫くは入院して貰いますよ。頭を打ってるのは確実なので。」
そう言うと、扉の向こうからベットに横たわった悠里が運ばれて来る。
「悠里!」
田坂は、駆け寄る。
「病室に案内しますから。」
看護師に促され、後を着いていく。
病室に入ると、田坂は悠里の傍に座り手を握った。
『悠里…』
暫くして、悠里がゆっくりと目を開いた。
「ん……」
「悠里?わかる?」
「ん…あ、ヒロくん…大丈夫?」
田坂は、呆気に取られた。
浅井もポカンとした顔をしている。
恵美はボロボロ泣いていた。
「馬鹿っ…その言葉そっくり悠里に返すよ。」
田坂は、そっと悠里の頭を撫でた。
「悠里の方が大怪我だよ?」
恵美が泣きながら言った。
「あ、そう言えば、痛いかも…」
動こうとして、顔を歪める。
「おい、馬鹿っ…動くな。暫く安静だぞ?」
浅井が慌てて声をかける。
「え、だって三軒茶屋のオープニング…もうすぐなのに」
「悠里の馬鹿!」
田坂は真剣な顔をして言った。
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