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真壁君は喋らない
第1章 真壁君は喋らない
「ていうか真壁、この幽霊って自縛霊じゃないの? なんで普通に大学まで来ちゃってるのさ」
真壁に訊ねても、首を傾げるだけで返事はない。代わりに幽霊の方が、死んでいるなんて信じられないくらい生き生きと語り出した。
『それは、真壁が慕う女とやらを探すためよ。私より美人でなければ、その仲を認める訳にはいかないからな。さあ子鬼、今すぐ私を女の元へ案内せよ』
「真壁が、慕う女?」
真壁は慌てて幽霊の口を塞ごうとするけれど、相手は触れないから意味がない。慕う女、と言われれば、あたしには心当たりが一つしかなかった。
「それって、中原美也子……?」
『み、みやこだと……それだ! その女のところへ行くぞ子鬼よ!!』
首を振り否定している真壁を無視して、幽霊はどことも知れず走り出す。ちょっと待って、これ放置すれば、中原美也子が幽霊の被害に遭うかもしれない!
「ま、待て待て! 呪い殺したり、祟るのは禁止だからねー!」
端から見れば、あたしは一人で叫んでる頭のおかしい人間だ。けれど、一度目にしてしまった手前、幽霊を放ってもおけなかった。
あたしと真壁と幽霊。皆が皆どこかで思い違いをした妙な縁は、まだまだ続く。
「真壁も、ほら後を追って! 止めに行かないと!」
「いや、だからミヤ、違う……」
あたしは後を追ってすぐに走り出し、真壁の言葉は流れてしまう。真壁が首を振りすぎて頭を抱えていたのは、あたしも幽霊も気付いていなかった。
おわり