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夜は、毎晩やってくる。
第2章 えすかれ
「うわあ……」
目の前のエスカレーターを見上げて、雛子は思わず声を漏らした。
高い。大きい。
なんというのだろう、普通のエスカレーターと比べて全然長い。
上の方なんか、光に包まれているようで、どこで終っているのか下からよくわからない。
「凄いだろ、日本で一番長いエスカレーターなんだって」
稜也が言う。
「日本一……なの?」
そんな物がこんな普通の場所にあるなんて。
ここは地下鉄から、地上の在来線への乗り換え用連絡通路。
百貨店も入っているありふれたターミナルビルだ。
下り、上り、下り、と並んだ三基のエスカレーターは、日曜日のお出かけスタイルの老若男女を、自慢気な風もなく淡々と運んでいる。
「地下二階から地上二階の高さまで続いているんだ。何mあるのかは忘れたけど」
稜也の解説の通りなのだろう。
エスカレーターの両側の壁は、途中で全面窓ガラスに変わって上へと続く。
頂上のあたりが眩しくてよく見えないのはそのためだ。
「今日のデートコースはここからスタート」
「えっ……?」
雛子は戸惑った。