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飼育✻販売のお仕事
第3章 従業員面接①・元寝取り会社員〜伊澄〜
一ヶ月ほど前に弾き出された旅行会社の直営店とは反対方面の界隈に、件のペットショップはあった。
店主は、茅中里子と名乗る女だ。
三十路に入ってまもないだろう、結野伊澄(ゆいのいずみ)がそう推測を立てたのは、長いブロンドの巻き毛にみずみずしい肉体美、エキゾチックな目鼻立ちが洋画のヒロインを聯想する一方で、里子の雰囲気や物腰が、酸いも甘いも嚙み分けた、脂の乗ったものだったからだ。
2016年、初夏。
ゴールデンウィークが明けたばかりという気がしない。
前述にもあるように、前職を離れて以来、伊澄は無職だ。曜日の感覚も鈍りつつあった。
「ご実家にインコを飼われているのね。一番お好きな動物は、人間のメス。特技はマンションの壁から漏れてくる、悲鳴と嬌声を聞き分けること。……前職は旅行会社の店舗にいらしたのね。お辞めになったのは、何故?」
「上司の彼女がオレに惚れて、ひがんで辞めさせられまして」
「まぁ。不当解雇じゃない。訴えたの?」
「彼女と男が婚約していて、訴えても良いが、その前に弁護士を呼んで寝取られたことを訴えると脅されまして」
「まぁ。お気の毒に」
眉を下げるペットショップ店主の態度に、伊澄は僅かに食傷した。