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飼育✻販売のお仕事
第14章 夏季休暇
「楽しみが先延ばしになっただけだと思うんだ」
浩二の腕が、りつきのウエストにまといつく。
「りんりんのこと諦めない。けど、もしこの間のご挨拶が上手くいって今年一緒になれてたら、あっという間に終わってた。そういうわくわくは、一生に一度きりだろう?少なくとも僕達は。それが何ヶ月、もしかしたら何年後の話になる。今はお預けの楽しみが、もっと先に待ち受けてる。幸せなことじゃないかな」
「はは、王子もそういうこと考えるんだ。デートの待ち合わせに早く着いちゃった時の私みたい」
「僕もだ」
「──……」
夏の夜風もぬくめる優しい空気に抱かれて、りつきは黒目を動かす。
少年に似通う無邪気な清澄、それでいて大人びた男の黒が、りつきを無言で纏縛していた。
「…………」
りつきは、ざらついた手の甲を包んだ指の力を強めた。浩二の顔がりつきに迫る。
二人の唇と唇が、プラス極とマイナス極よろしく距離を縮めて…………
「ん……」
りつきの口舌は今に封じられるところだった。
だが、相異なる体温が触れ合うことはなかった。