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飼育✻販売のお仕事
第14章 夏季休暇
「っ、……」
「りんりん?」
浩二の困惑した声が、りつきを我に返らせた。
りつきの手は、浩二のそれを離れていた。最愛の王子に背を向けて、唇を押さえて顫えている。…………
「ごめん。久し振りだったから、吃驚して」
「ううん。僕の方こそ」
「──……」
りつきの胸を、にわかに数週間前のキスが過ぎった。
いやに明るい密室で、半裸になって、里子とキスした。…………
浩二には黙っておくつもりだ。
打ち明けたところでりつきの罪悪は消えない。浩二まで傷つく。
だが、記憶は消えない。消えないばかりか浩二にいだくような感慨を、このところ、里子にまでいだいている。
気の所為だ。
りつきは里子と目を合わせられなくなる度に、半裸を見られた単純な恥じらいからくるものだと自分に言い聞かせていた。
「お嬢様!何をなさっておいでなのです!」
「っ…………」
りつきに追い打ちをかけるようにして、ベランダのガラス扉が突然開いた。
夜風に当たっていただけだと、言い訳出来ないだけの威圧が、りつき達を萎縮させた。
三郎の目は、父親が娘の嘘を見咎めた時のように血走っていた。