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飼育✻販売のお仕事
第14章 夏季休暇
* * * * * * *
朝一番に、生後一年半の猫の買い手が見つかった。
同棲を始めたばかりだというカップルだ。
この辺りでは見かけない顔だ。いかにも今風の女達と、里子は小動物に関する話題で盛り上がり、あれこれと売り物を出してきては双方の相性を判断させた。
「お買い上げ有難うございます」
「ほんと可愛ーい」
「だね。おとなしいし、貴女も少しは見習いな」
「いじわる。もう今日お風呂一緒に入んないっ」
二十代後半と見られる二人の女達は睦まじやかに肩を寄せ合い、餌やら玩具やらをぶら下げて、ふかふかの小動物を構いながら帰っていった。
「はぁぁ……お幸せそうでしたねぇ」
「いつまで続くのかしら」
「むむっ?店長、リア充爆発しろってタイプですか?」
「別に」
同情しても、ひがむような理由はない。
里子は棚を整えて、餌や遊具を補充した。
人と人との繋がりは、当たり前に溢れ返っているようで、築きにくく壊れやすい。特に愛だの恋だのという絆を生涯の中心に据え置くタイプの人間は、予想外の現実に直面した時、それに対する免疫がない。
ただ、泡沫の幻想と分かっていても、気を遣りそうにくすぐったかった。
場所をわきまえないで好意を示し合うカップルも、少なくとも里子に生理的な感動を与える。そこに永遠を見出せないのは別の話だ。