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飼育✻販売のお仕事
第14章 夏季休暇
* * * * * * * *
伊澄は恵果の誘いを受け、昼下がりから街へ出掛けた。
絵画展の見学に、ウィンドウショッピング、喫茶──…さしずめデートの真似事のあと、恵果は伊澄を郊外の邸宅に招いた。
「良かったじゃない」
流行りの化粧に粋な装束、無機的な見かけからは想像つき難いことに、恵果の私室は愛らしかった。
ドレープの効いたカーテンに覗く窓は、白んだ空を映していた。
伊澄は天蓋からラッセルレースの降りた寝台に恵果を縫いとめ、腰かけた彼女の真横に膝をついていた。花園にうもれた恵果の片手に指を重ねて、その唇をキスで塞ぐ。
「どこが、ですか」
「参ってたんでしょう。恋人ごっこ」
「ま、それは……」
小鳥がじゃれつくようなキスを繰り返しながら、二人の吐息に混じるのは、「ふぁみりあ」のもう一人の新人に関する話題だ。
昨夜の災難は避けて通れないものだった。いつかは迎えねばならない壁だ。
だが、三郎の激昂は伊澄達の予想を遥かに上回っていた。
伊澄達が床に就けた頃、深夜二時を回っていた。