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飼育✻販売のお仕事
第14章 夏季休暇
「時にまお。お前の行ってるペットショップ、「ふぁみりあ」だろ」
「知ってるの?」
「あのな、これはお母さんには内緒だが……」
近況を報告し合う父娘の会話は尽きない。
まおが本題に入りかけるまでに、窓は黄昏に染まっていた。
邦広は、偶然、「ふぁみりあ」の裏側のホームページを見かけたのだという。大方、アンダーグラウンドサイトで淫らな画像でも漁っていたのだろう。
VIP会員のこと、人間飼育販売のこと、そうした不法な側面を、彼は知った後だった。そして店主の動物愛護の理念には、感服の一言に尽きるらしい。
話は早い。まおは陽瑠夏の件を話した。
「ふぁみりあ」の秘密は一般市民にあまり知られないに越したことはない。この際だ。母親に頼む道は断っていた。
「陽瑠ちゃんか……。あすこの親御さん、真面目な普通の人だったのにな」
「吃驚でしょ」
「なぁ、まお」
「何?」
「お前、やっぱ地下でも業務やってるのか」
「──……」
「なんて、訊いたらセクハラか」
子供以上に無邪気な男が豪快に笑った。
「良いよ。その会員とやらに登録して、買い取ったらどっかに逃がしてやれば良いんだろ」
「うん。お願い」
「じゃ、水曜は一緒に帰るか。可愛い娘がバイト先で後味悪い思いをしたんじゃ、お父さん心配で動物とも遊べない」
ただし、と、邦広の顔が神妙になった。
まおはソーサーごと紅茶を戻して、背を伸ばす。
「友達に会ってくれないか?彼女、本当に動物好きなんだ。「ふぁみりあ」の話を聞かせてやってくれ」
「うん、そうだね」
才色兼備の動物愛護家。
もしここに里子がいたとする。人間はゴミ同然に扱うくせに、小動物には至れり尽くせりの待遇をするペットショップのオーナーは、邦広の友人とさぞ話が合ったろうとまおは思った。