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飼育✻販売のお仕事
第15章 従業員、エスケープ
表口のフロアに出ると、由紀子らが売り場を吟味していた。
彼らは一般客同様、志穂に小動物らに関する知識を求め、毅や宗弥は既に猫を我が子のように抱いていた。
まもなくして、全員の新たな家族が決まった。
里子は彼らと最後の別れを交わしながら、小動物らにも一声ずつかけて、従業員らを見送った。
「……一気に静かになったな」
「そうね」
「田口は木曜帰ってくるんだっけ。ケージの掃除、それからでいっか」
志穂が売り場の整理にかかると、里子はりつきにペナルティの存在意義を説明した。
畢竟するに「ふぁみりあ」は、一階フロアに利益を見込んでいない。取扱の小動物を、施設や道端、時には一般家庭から仕入れているこの店では、その頭数故に飼育のコストが売上額を上回る。
そこでとった対策が、地下の人間も積極的に仕入れていき、あぶれた彼らに小動物を引き取らせるというものだ。
人間は一体売れれば相当の額になる。だが、売れなくてもこのペナルティによって三ヶ月分の生活費は清算出来るし、且つ二匹目を引き取りたいと言い出す者があった場合はプラスにさえなった。
夕方になり、りつきと入れ替わりに伊澄が出勤してきた。
りつきは、相も変わらずこの郊外ではさぞ目立つだろう格好をしていた。赤い英文字がプリントしてあるワンピースは、大きなショッキングピンクのウエストリボンを結ぶとプレゼント包装を彷彿とする感じになる。
帰り際、着替えを済ませたりつきのリボンは、またぞろ縦結びになっていた。
里子は白いワンピースのリボンを結び、パステルピンクの後ろ姿を見送ると、店に戻った。