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飼育✻販売のお仕事
第16章 二人きりで...
地下の業務がひと段落ついた頃、夜闇は月にぼやけていた。
里子が今しがた回収した食器を洗う傍らで、りつきが流し台と食器棚を往復していた。
「ふぅ……食器って、こうして見るとたくさんありますねぇ」
里子は、空になった水切り籠の横にスポンジを置いた。りつきも湿ったタオルを業者に出す洗濯籠に入れて、別のタオルで手を拭いていた。
乾いた食器は、収納力に長けただけの棚を隙間なく満たしていた。地下一階から二階まで、売り場一つにつき二十体は超える人間達が使っているだけあって、小さな飲食店に匹儔しているのではないか。
里子はキッチンを出ると、地下の売り場の点検を始めた。
常であれば志穂とまお、伊澄が分担しているここの業務も、今夜は適度に省いていた。
躾はほとんど手をつけていない。シャワーにおいては、地下二階の人間達は通常通り一斉に大浴場に入れて、地下一階は、オスに限って各自で湯浴みさせた。それからメスの数体だけをシャワー室に運び込み、里子はりつきに久しく彼女らの身体を洗う稽古をさせた。
シャワーも簡易トイレの交換も、掃除も、夜の給餌も、業務に専念している時のりつきは、里子を飽きさせることがない。一つ一つに感慨を示し、よく動く表情を変え、時に大きな目を潤め、白い肌を赤らめる。そしてネジの緩んだりつきの不思議な挙動は、里子を笑わせさえしたものだ。
売り場はどこも問題なかった。例の部屋を除くあちらこちらで歓談が始まっており、なごやかな夜の時間流れ出していた。
里子もりつきと地上へ戻り、更衣室へ入っていった。