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飼育✻販売のお仕事
第16章 二人きりで...
「今日はお疲れ様。大変だったでしょう」
「はい、でも、こんなにがっつり教えてもらったら、地下の業務も覚えてきました」
「そうね。ご飯を作るのも、新崎さん、手際が良くなったわ」
「わーいっ、誉められちゃった」
里子が着替えを始めると、後方でしめやかな衣擦れの音が立ち出した。時折悲鳴が混じるのは、そそっかしいことをしている所以だ。スカートに片脚を入れようとしたところでバランスを崩すだの、ブラウスのボタンをかけ違えるだの、りつきは着衣にも難儀することがあるという。
「新崎さん」
「はい」
「何故、結野さんのご家族に、ご同居が知られてはいけはいけないか……訊いて良い?」
「あ、そのことですか、……」
りつきの話は、至極単純なことだった。
彼女の両親は社交的で、あらゆる家と交流がある。
先日も、恵果の家族がりつきの家庭を知っていたらしく、伊澄が警戒心を持つようになった。
それからりつきも居場所が知れて連れ戻されることを怖れて、伊澄の厚意に甘えているのだという。