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飼育✻販売のお仕事
第16章 二人きりで...
「私も、店長に質問良いですか?」
「なぁに?」
「──……。前に、話されてた人」
一瞬の逡巡を置いて、りつきの声が、心なしか緊張を帯びた。
「店長の、恋人さん。何故、……亡くなったんですか」
「…………」
里子をこそばゆいまでの視線が抱いた。
振り向くと、今に大粒の真珠でもこぼしかねない大きな目がたゆたっていた。怯えた目だ。だのにこの世のあまねく優しさをかき集めた温度を含んだ黒い目は、里子をしかと見澄ましていた。
「…………」
鈴花をもの同然に扱った男の一人娘──…かつては里子の胸に泣き縋り、髪を結ばせ、リボンを直させた令嬢が、今またりつきに重なった。
「…………」
違う。
りつきはあの少女ではない。
ここにいるのは風俗店経営者の長女だ。里子の思い出の令嬢は、財界でも名高い実業家の愛娘。似ていても、似ているだけだ。