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飼育✻販売のお仕事
第17章 疼く想いを
木曜日、「ふぁみりあ」の朝は賑わっていた。
コンビニエンスストアでパートを始めた三郎が出勤前に立ち寄ったのと、まる一日休みの浩二がりつきの顔を覗きに訪ったからだ。
元執事の年配男は、音も上げないで浩二にりつきと恋人の縁を切るよう主張し、浩二は伊澄とひと悶着を繰り広げていた。
「お二方。わたくしのお話は終わってませんぞ」
「そもそもオレは部外者だ。仕事に戻る」
「待て。結野ちゃん、りんりんに謝れ。そして二度と彼女に触れないと、誓約書を書け」
「いや、謝ったから。あと一緒に住んでてそれは物理的に無理だから」
「お二方!わたくしの話を!」
「…………」
里子が小動物らの給餌の準備をしている側で、りつきも手を動かしていた。
いとけなさの残った横顔は、珍しいほどすすけて見える。伏せた睫毛に覗く目も、脇見一つしないで手許を追いかけていた。
「新崎さん、大丈夫?」
「何がですかぁ?元気ですっ」
「…………」
里子達の足許に広がる器の全てに、とりどりの餌が入った。
二人、各々のケージに餌を配る作業にかかる。
「新崎さん」
「はい」
「結野さんって、お酒、本当に弱いの?」
「うーん……私あんまり飲みませんし、伊澄ちゃん達も気遣ってくれて、よく分からないんです」
「そう」
里子は器を差し入れた鳥籠を閉め、続いて猫のケージに向かった。