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飼育✻販売のお仕事
第17章 疼く想いを

「新しいのを準備すれば良いんです」

「新崎さん、それって……」

「私、ホワイトチョコレート好きなんです。ポケットサイズのやつ。でもあれ、小さくありませんか?すぐなくなっちゃって、昨日も買いに行ったんです」

「…………」


 相好の崩れたりつきとは対照的に、きららきかけた里子の胸は、たとえ難い空虚がしみた。


 何に期待したというのだ。


 それでも衝撃の余韻は里子をいだき続ける。

 こんな風に考えたこともなかった。気休めだ。気休めは、りつきが口にしただけで、里子の虚勢を優しく咎める。


「新崎さん」

「……はい」

「何故、私にそういう話を?」

「それは……ぁっ」


 腰を上げて、里子はりつきを引き寄せた。

 それこそ甘いものから出来たような片手首を捕らえて、肩にかかったツインテールを指で伝う。

「元気ないわ。説得力、なしよ」

「…………」

「結野さんにキスされたこと、そんなにいやだったの?」

「そんな、わけじゃ……」

 りつきの顔が、今また泣きそうに歪んだ。

 たゆたう双眸。開いては閉じて、閉じては開いてを繰り返し出す唇は、にわかに強く結ばれた。

「……キス、してもらえませんか」

「え?」

「店長の、優しかったなぁって……その、伊澄ちゃんの所為で、忘れ……ちゃったっていうか……」

「…………」


 善人面を張りつけただけの、あの男と別れるつもりもないくせに。


 里子はりつきの唇を塞いだ。

 触れ合うだけの甘いキスを何度か重ねて、小さな唇を舌先でなぞり、肉厚の花びらを割り開く。
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