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飼育✻販売のお仕事
第17章 疼く想いを

「ん……」

 たゆたう吐息を移し込んだ。ウエストを抱いてその顎先を固定して、里子はりつきの歯列の向こうの味を這う。二つの舌が誘い合う。リップグロスの匂いが鼻に上った。


 じゅる……ちゅっ……ちゅる…………


 貪欲な音を紡ぎながら、里子はりつきの首筋をなぞって鎖骨を撫でた。

 小さな悲鳴が唇と唇の間を逃げてゆく。

 唇からおとがいへ、頬へ、耳朶へ、柔らかな質感を覚えた唇を移してゆく。


「はぁっ……ん……ふ」

「…………」

「ぁんっっ!!」

 甘やかすぎる声に弾かれるようにして、乳房を掴んだ里子の片手が我に返った。

「──……」

 りつきの目が、狼狽露わに里子を見ていた。

「…………」

「ごめんなさい。仕事に戻って」

「…………」



 血迷いすぎだ。りつきを抱いても、いやが上に喪失を突きつけられるだけだ。


 大昔の離別のあと、里子は鈴花をなくした場所を補いたいためだけに、女を漁った時分がある。

 代わりなど存在しなかった。

 少し本気で求めた女に限って素っ気ない。淋しさを紛らわせたくて側にいるだけの女は、結局、女の方にも我欲しかない。我欲だけで里子を求め、不安定な部分を埋めようとする。

 愛とは違う、単純な束縛は里子の方から断ち切った。愛と我欲。まるで紙一重の双方が、それでも相異なる定義は何か。


 ただ、手に残ったのは、孤独という現実だ。

 男という概念を嫌悪するのと同様に、女の精神に恐怖するようになっていた。

 喪失をまとった里子の手は、それを宿した肉体を、とても愛でようという気になれなくなっていったのだ。…………
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