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飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く


 恵果が伊澄と個人的なところで会ったのは、今日で二度目だ。


 デートの盛り上がりようはこよなかった。

 伊澄は終始相好を崩し、恵果が洋服を試着する度、各々に異なる意見をくれた。

 性別を感じさせない風采に、侠気溢れる立ち振る舞い、外での陽気さとは一変、伊澄はひとたび寝台に誘い込めば、甘く凄艶に女体を媚薬の海に沈める。

 あれだけ女好きのする人となりでありながら、恋愛経験は皆無という。伊澄は恵果に片恋の経歴を話し、恵果は彼女と一緒になって、連れない女達を揶揄した。恵果も、伊澄に優って饒舌だった。昼餉はデザートまで平らげて、洋服を新調した勢いで、化粧品まで新たに揃えた。


 屋敷に戻り、それから激しい情事にひと満足するまでの間、まるで一瞬のようだった。

 どことなく帰りたがらない伊澄をからかい、恵果は別れを惜しむ恋人を真似て彼女の頰にキスすると、その姿が夜闇に紛れるまで見送った。



「姉様、ストレス?」

 リビングのソファ腰をうずめて、啓吾が新聞をめくっていた。

 恵果は家政婦を呼びつけて、ティーセットを用意させた。


「そう思う?」

「声、めっちゃ聞こえてた。それと服」

「ふぅん」


 甲でなく乙でもない恵果の身体は、薄く赤いワンピースをつけていた。晒した鎖骨には、天の河のごとくまばゆいビジューのネックレスが煌めく。

 確かに、二度ほど見かけた「ふぁみりあ」の店主の普段着でも、こうもきわどくはなかった。
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