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飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く
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果てないものだとたかをくくっていたあの頃の──…ついこの間まで現実と呼んでいたような光景が、明け方の夢を浮遊する。
幻の鈴花は昔のままの笑顔で里子にじゃれついた。多くの小動物らに囲まれて、里子に彼らに関する知識を与えた。人間の我欲の嗜好品、売買される彼らの流通の実態を語った。
鈴花は動物愛護者でありながら、理想や綺麗事とは疎遠だった。
なかんずく人間に対してはシビアだ。
幼馴染の実業家に一切の生活を援助させ、悠々自適に暮らしていたその生業は、世間一般からすれば愛人と変わらなかったろう。だが、それは鈴花が男に与えられたという仕打ちに対する報復だった。同時に、彼女一人ではとても面倒を見きれなかった小動物らのためでもあった。
眠りの浅瀬で見る夢は、連綿たる感傷を慰める。
朝ぼらけに訪う鈴花は、現世で語らなかった未来を語った。
永遠を誓うだけでは足りなかった。手をとり合って、共に生きてゆく。恋人達なら夢見たろう嚮後に、二人が憧れたことはなかった。
なくしてから里子の中で膨れ上がった後悔は、鈴花の希望(ゆめ)に頷く度、ひとときでも癒される。
鈴花を男の手から掬い上げることを考えていたら、今でも二人、肩を並べていられたか。