この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く
寂しかった。不安だった。
友人や女に不自由しないで過ごしてきた里子には、それだけ取り繕っていたものがある。
孤独を怖れる脆弱さ。愛に縋りたがる執念。
里子がそうした本性を押し殺して得ていたものは、うわべだけの充足だった。
鈴花に逢って、初めて淋しいと口にすることが恥ずべきでないと気がついた。意味もない体裁のために、自らぬくもりを突き放していたのだと。
鈴花は里子を受けとめた。一方で、里子は鈴花の何を受け入れていたというのか。
忘れた頃に見る夢は、懺悔だ。
あれだけの愛を与えてくれた最愛の人に、何も返せないまま終わってしまった。
里子は、本当に、まだこの世に生きているのか?──……
目覚めたくもない夢から目覚めた朝は、最悪だ。
「…………」
夢から覚めることを願っていない。
会いたい。
鈴花が里子を忘れていても、里子は夢の中でしか鈴花に償うことが出来ない。