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飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く
* * * * * * *
盆を控えた葉月のある日の昼下がり、まおの知人を名乗る女が店を訪ねた。
肩にかかる黒髪に、穏やかなみずみずしさを湛えた顔──…その双眸は、犀利な知性を光らせながら、少女のように明るい。
女はケージを一つ一つ眺めて歩き、おりふし小動物らと目と目で会話しているようだった。そうして売り場をひと回りすると、再びレジに足をとめた。
「ごめんなさい。田口さんも店長も、休みなんです」
「ううん。お店を見せてもらいたかっただけだから」
「有難うございます。動物、お好きなんですね」
「はい、とっても。まおちゃんが、「ふぁみりあ」は私みたいな通にはもってこいのお店だって。納得しました。皆、こんなに小さいところにいるのに、健康でストレス全然なくて、大切にされているんですね。運動も外に出されてるんですか?」
「ご覧になっただけで分かるんですか?」
「伊達にまおちゃんのお父さんの友達ではありません」
りつきは女に「ふぁみりあ」のことを話した。
ここにいる小動物らは客の少ない時間帯、従業員が構ってやって、犬は散歩へ連れても行く。特に浩二や三郎のように従業員の関係者が訪えば、彼らに遊び相手を任せることもあったのだ。
「どの子か抱いてみられますか」
「ウサギさん、良い?」
「お姉さんもウサギさん好きなんですね」
「店員さんも?」
「はいっ。ペガサスとユニコーンの次に好きです」
「ふふっ、それは動物じゃないわ」
「外国の動物さんなんじゃないんですかぁ?」
茶色と白のマーブル模様のウサギを出して、りつきは女に差し出した。