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飼育✻販売のお仕事
第5章 採用祝いと王子になり損ねた王子〜浩二〜
「りんりーん、結ちゃーん!コングラデーション!」
扉が開くや、浩二は自分より精悍な友人に荷物を押しつけ、傍にいたパステルピンクの天使に飛びついた。
折れそうに華奢な腕とほんのり盛り上がった胸元が、浩二の腕の中でよじれる。浮世離れした恋人に相応しい、パステルピンクの髪が浩二の首筋をくすぐって、いじらしい手が胸板を押し返してきた。
「いらっしゃい、王子。久し振り」
「だね。仕事、二人とも採用だろ。祝いに来たんだ」
「つーかオレ出てった方が良い?」
「何言ってんのさ、結ちゃんと僕の仲じゃん」
三人、リビングに場所を移した。
テーブルに空のグラスと皿が準備してあった。
「乾杯!」
「はい、王子。あーん」
浩二が巻き寿司に齧りつくと、残った欠片はりつきの口に入っていった。
七年も交際している感じがしない。りつきと分かち合える時間は、さしずめ摘みたての漿果、全てが生まれたての炫耀だ。
ついでを言えば、伊澄とは一度も同じ学校に通わなかった実感もない。三人、昔から一緒にいて当然の、それでいて浩二を新鮮なぬくもりの中に招く。家族も同然、けだしりつきも同じ気持ちでいる。
「りん、はしゃぎすぎ。明日から人生初の仕事だろ、そんなに飲んで平気?」
「大丈夫ー。伊澄ちゃんと一緒だもん」
「店長ってどんな人?」
「ナイスバディ」
「女王様」
プロポーションに優れた責任者らしい。
浩二はそれだけ理解した。