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飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く

* * * * * * *

 里子が買い出しから戻ると、出かける前はそこにいたはずのウサギが一羽、いなくなっていた。

「お帰り」

 志穂が台帳から顔を上げた。りつきが空いたケージを掃除していた手を止めて、振り向いた。

「お帰りなさいっ、店長」

「ただいま」

「あ、店長お帰りなさい」


 里子は大量の食糧で膨らんだレジ袋をまおに預けた。


 時刻は、午後五時を回っていた。

 昨日休みをとっていた里子とまおに代わって、今日は伊澄が休んでいる。食糧は、これから志穂とまおが調理して、地下の売り物に給餌する。


「店長、惜しかったですぅ」

「え?」

「田口の知り合いが来たんだってさ。お前のお気に入りのベガに一目惚れしちまったそうだ。私も地下にいたから面拝めなかったんだけど、大の動物好きらしいぜ」


 りつきと志穂が、今しがた帰っていったという客の話題でまおと盛り上がり出した。


 ウサギを購入したという客は、まおの父親の近所らしい。
 二人の話を要約するに、まおは月初に彼の楽園を訪った際、例の女を紹介された。そこで彼女に「ふぁみりあ」のことを話したところ、女は夏季休暇を利用してこの街を訪ねてきたようだ。
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