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飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く
「井清さんさ」
診察台に腰かけた志穂に、読み取り難い気色が滲んだ。
「本当に亡くなったのか?」
「…………」
「里子も私も、噂ばっか信用して、確認したのだってあの旦那じゃん。もっとちゃんとした、市役所とか──…」
「良いの!」
「…………」
志穂の話す通りだ。
あの夜以来、鈴花の息差しは消えた。里子が彼女の死を認識した材料は、使用人達の噂、そして問い詰めた雇い主の言い分だ。最も不信をいだいていた、かたきの男──…。
だが、志穂の予感が的中していたとする。
さすれば鈴花は里子を探していたろう。
違う。
鈴花は、見限ったのかも知れない。それを認めるのには、里子は今でも鈴花を求めすぎている。…………
「人間は、身勝手」
「──……」
「探したくないの」
「里子?」
「会えば、鈴花は私を拒絶する。鈴花があんな目に遭ったのは、私の所為。……あの人がいたぶられていた時、私は何もしないで志穂に泣き言ぶつけてた。あの夜、探そうともしなかった。あの人がどんな風に、……あの男の別荘を解放されたかは知らない。知ってさえいないの」
同じ罪悪を重ねたのに、否、鈴花を男に背かせたのは里子だ。だのに罰を受けたのは、ただ自由に生きていただけの鈴花だった。