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飼育✻販売のお仕事
第18章 魅惑の花はどこで啼く
「ごめんな……里子」
「え?」
「──……」
肩に、華奢な腕がまとわった。里子の顔が、志穂の首筋にうずもれる。
「…………」
「服、汚れるわ」
「新崎がモップかけてたろ」
「っ……」
志穂の慰安など、里子には無意味だ。
そのくせ甘える。志穂の語る里子の気性は清冽で、善良だ。許されるべきでない里子を、未だ許そうとする。ぬくもりがある。
「お前は悪くない」
「……、違……」
「お前は井清さんや新崎を、人間らしくねぇって言うけど。私からしちゃ、お前は同類だ。お前は人を見かけで判断しない」
「違う。……私は、……鈴花を……。何故……私なんかが……」
「私、これでも傷ついてきたんだぜ。だのに、里子は私を怖がらなかった。家政婦辞めたあともこの仕事に声かけてくれた。最後に笑うのは、お前みてぇなやつだ」
「…………」
「そうじゃなくちゃ、私が神さんに落とし前つけてやる」
面倒見の良い友人は、屋敷にいた頃もこうして周囲に気を配っていた。
里子より更に新しい家政婦達は、やはりそんな志穂を怖がっていた。里子はこの同い年の先輩を、疑いなく慕っていたというのに。