この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
飼育✻販売のお仕事
第19章 甘い残り香
窓の景色が消える頃、三人、燃え尽きていた。
恵果は佳代子を退室させて、伊澄を枕に呼び寄せた。
「もし重婚が認められる世の中になったなら、益口さんと、そして佳代子を迎えたいわ」
「そうですか」
「貴女は、遊び相手で構わない?」
「二人までしか無理なんですね」
「いいえ。……結野さん、彼女が好きだから」
「──……」
りつきに勢い余って告白した。
平静をなくしていた所以もあった。母親が訪い、それでなくても昼間から亜由子の世話で疲弊していた。
逃げ場をなくした伊澄の胸裏は、あの夜、自棄になっていた。
結局、翌朝、飲んでもいない酒に責任転嫁して、りつきに前夜の過失を撤回した。
「紹介で家政婦さんを雇う家、珍しくないのよ」
突然、恵果が先ほどの話を持ち出した。
「もっとも、私みたいに玩具にしちゃうようなところは例外。面白いのは、逆のパターンね。あちこちの令嬢を犯しまくっていた女が、家政婦になった途端、真面目腐ったつまらない人間になり下がったこともあるそう」
「お知り合いの家ですか?」
「ええ」
「──……」
だけどね、と、恵果の腕が、伊澄のそれにまとわった。
「彼女、屋敷の外では相変わらず女を手篭めにしていたらしいわ。それも家長の愛人。家長は怒って、愛人は蒸発。もっとも、愛人の行方を知る人間がいるのでは、蒸発というのもおかしい……か」
「…………」
どこかで聞いた話だ。伊澄の隣で恵果が無邪気に笑い声を立てていた。
今の話には語弊がある。
会ったこともないはずの女を思い描いた伊澄の胸が、刹那、痛んだ。