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飼育✻販売のお仕事
第19章 甘い残り香



 窓の景色が消える頃、三人、燃え尽きていた。

 恵果は佳代子を退室させて、伊澄を枕に呼び寄せた。


「もし重婚が認められる世の中になったなら、益口さんと、そして佳代子を迎えたいわ」

「そうですか」

「貴女は、遊び相手で構わない?」

「二人までしか無理なんですね」

「いいえ。……結野さん、彼女が好きだから」

「──……」


 りつきに勢い余って告白した。

 平静をなくしていた所以もあった。母親が訪い、それでなくても昼間から亜由子の世話で疲弊していた。

 逃げ場をなくした伊澄の胸裏は、あの夜、自棄になっていた。


 結局、翌朝、飲んでもいない酒に責任転嫁して、りつきに前夜の過失を撤回した。



「紹介で家政婦さんを雇う家、珍しくないのよ」

 突然、恵果が先ほどの話を持ち出した。

「もっとも、私みたいに玩具にしちゃうようなところは例外。面白いのは、逆のパターンね。あちこちの令嬢を犯しまくっていた女が、家政婦になった途端、真面目腐ったつまらない人間になり下がったこともあるそう」

「お知り合いの家ですか?」

「ええ」

「──……」

 だけどね、と、恵果の腕が、伊澄のそれにまとわった。

「彼女、屋敷の外では相変わらず女を手篭めにしていたらしいわ。それも家長の愛人。家長は怒って、愛人は蒸発。もっとも、愛人の行方を知る人間がいるのでは、蒸発というのもおかしい……か」

「…………」


 どこかで聞いた話だ。伊澄の隣で恵果が無邪気に笑い声を立てていた。

 今の話には語弊がある。

 会ったこともないはずの女を思い描いた伊澄の胸が、刹那、痛んだ。
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