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飼育✻販売のお仕事
第19章 甘い残り香


「はぁっ、んん」

 里子は、りつきのおとがいを捕らえて歯列を割った。無味の液体に浸った壁をくすぐって、舐めて、白い貝の一つ一つを撫でてゆく。

 息がもがく。里子のそれか、りつきのそれか。

 おりふし呼吸を取り入れながら、里子はりつきの舌を奪った。


「あぅ……んっ、……」


 ぢゅるっ、ちゅ……ぴちゅ、じゅる…………


「店長ぉ……んん」

 たどたどしい舌を踊らせて、抱き込むようにじゃれついた。


 二つの唇が離れても、りつきの目は、里子の総身に媚薬に等しい情動を送った。

 里子はりつきに口づけて、今一度深いキスを続けた。気も遣らんまでに誘惑的な唾液を啜って、里子自身も口内に潤うそれをりつきの中に流し込む。


「んっ、んぅ」

「……名前で、呼んで」

「はぁ、……」

「私のこと……好きだと言ってくれるなら」

「ぁんっ」

「ちゃんと呼んで。…………。…──りつき」


 櫛は、里子らの真下に落ちていた。

 指先を撫でて太ももを這い、ともすれば乳房も包み込んでいた里子の利き手は、りつきの質感を覚えれば覚えるだけ飢えてゆく。

「はぁっん……んんぅぅ」

 パフスリーブから伸びた腕を引き上げて、ウエストを捕らえてキスをした。



 果てない口づけを交わしながら、二人、たった今まで鏡に映っていただけの寝台に倒れ込んでいた。

「あの、これ、あの──…」

「黙って」

 花柄のコットンを押し上げる膨らみを掬い上げて、揉みしだく。

 里子はりつきがうずもれる真横に片膝をつき、彼女の前方を遮断した。

 口づけが、唇から喉へ移ってゆく。耳朶に吐息を吹きかけて、呼び慣れない彼女の名前を繰り返しささめく。

 りつき。……りつき。

 初めて声に出した名前は、里子の声にしっくり馴染んだ。

「てんちょ──…さ、里子さん……」


 消え入りそうなソプラノが、腕の中をこぼれていった。
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