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飼育✻販売のお仕事
第20章 家庭訪問〜十四年前の扉が開く〜
週明け、りつき達の暮らしている部屋は、師走の暮れにも匹儔して忙(せわ)しなかった。
伊澄は可視的な雑音だらけだった棚の中身を全て出し、本やらDVDやCDやらを種類ごとに整えて、日用雑貨を収納ケースに押し隠した。それから無造作に伸びたコンセントは普段使わないものを巻き、ガラス扉の食器棚も並べ直した。傍らで、りつきは窓ガラスを磨いてモップをかけた。
元々殺風景だった3LDKは、一時間半も働けば、見違えた。
「ふぅ、窓ピカピカだし、床も綺麗!伊澄ちゃんもさぶちゃんもお疲れ様」
「りん、拭き掃除残ってる」
「ええっ、モップしたのに?」
「特に玄関、埃だらけ。第一印象は大事だぜ」
「うぅぅ……」
大掃除を始めたのにはわけがある。
遡ること二日前、里子が家庭訪問を閃いた。
それというのも昔、志穂の働いていた猫カフェでは、半年に一度、店主と従業員の面談が行われていたという。面談というのは建前で、上下間でも親睦を深めたり従業員らが日々胸に溜め込んでいることを吐き出す機会を設けたり、畢竟するにメンタルケアだ。
里子は、志穂がその習慣を懐かしんでいたところに関心を持ったというわけだ。