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飼育✻販売のお仕事
第20章 家庭訪問〜十四年前の扉が開く〜





 出て行く口実に過ぎなかったのは、明白だ。

 部屋には当然、里子とりつきだけが残った。



 りつきは里子を私室に招いた。

 伊澄の寝室の奥に位置するりつきの部屋は、一つ手前の空間に引き替え、さしずめ異空間だった。キャンディカラーのカーテンに、壁中に巡らせてある色とりどりの洋服、畳六畳ほどの部屋の三面は、雑貨や人形やらで雑然としていた。

「可愛いわね」

「狭くないですか?」

「隣の部屋に比べれば。貴女らしいわ」

「っ……」


 りつきが腰を下ろした隣に、里子も足場に気を付けながら座り込む。

 華奢なウエストから広がるラベンダーのチュールスカートが、パステルピンクのシーツに花のごとく広がっていた。里子の膝の真横には、昨日りつきが肩にかけていたショルダーバッグ──…星型のそれは、改めて見ると機能性より装飾性が重んじられている風だ。


 名前で呼び合うようになって、真っ先に気付いたのは志穂だった。伊澄の場合は、職場の変化を言及するまでもなかったのか。

 里子はりつきを泊めた翌朝、志穂から届いていたメールを開いた。浮かれた冷やかしが書いてあるだけだった。志穂にしてみれば、友人の弱音を聞かされるのにも草臥れていたのかも知れない。
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