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飼育✻販売のお仕事
第20章 家庭訪問〜十四年前の扉が開く〜



 伊澄の帰りを待つ間、りつきは里子に洋服の話を披露した。

 夢物語のフェアリーランドや現代アートから抜け出てきたような、ゆめかわいいファッション。初めてりつきを見た時に比べ、里子の目は慣れていた。慣れるばかりか可愛らしい、それでなくては、もはやりつきと呼び難くまでなっている。

 りつきにとって、フリルやリボンがふんだんにあしらってある洋服に袖を通す行為は、里子にとって目の毒だと揶揄されがちな洋服を好くのと同等だ。

 特別な思い入れはない。
 ただ、肌に馴染むものを着ている。


 量産の洋服を好んでいる人間も、里子らにしてみれば同等だ。それがりつきのようにただ華やかであるだけで、世間は意図なきにせよ心ない解釈をする。


「里子さんのお話も聞かせて下さい」

「面白い話はないわ」

「じゃあ、質問します。何で動物さんのお店を始められたんですか?」

「…………」



 屈託ないりつきの目が、里子に良心の呵責を呼んだ。



 「ふぁみりあ」は、鈴花と繋がっていられる術だった。

 鈴花は里子を忘れても、里子は鈴花を忘れない。

 取扱商品に人間を含めたのは皮肉だ。里子が里子を保っていられるよう、慰安でもあったのかも知れない。
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