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飼育✻販売のお仕事
第20章 家庭訪問〜十四年前の扉が開く〜

「──……」


 子供の恣意性だったのだ。

 ものの分別も曖昧な年端の令嬢が、名前も知らない家政婦にぐずるに至ったのも、もとより父親の浮気が原因だった。里子は望んで彼女の側に付いていた。


 成長したりつきは、鈴花という存在を肯定した。里子のために、世に愛人と呼ばれる種類の女を憎まなかった。


「茅中様」

 襖の向こうで、里子を呼ぶ声がした。三郎だ。

「行って説得に加わりましょうか」

「いえ、旦那様のお怒りが増すだけでございます」

「──……」

 りつきが気付かなかったくらいには、里子も昔と変わっている。三郎も同じだ。里子が真正に会ってはならないのは、単純に「ふぁみりあ」のオーナーだからだ。

 他人の加勢がどこまで真正の心火を鎮められるか。見込みはどうあれ、りつきの素性を知らないでいられてさえすれば、里子は今頃、飛び出していた。


「では、もうお暇します。……ウチの店、休まれると困るの。新崎さんに、突然やめることだけはしないよう、お伝え下さい」

「っ、……。──……」


 玄関まで見送りに出た三郎の目は、もの言いたげに里子を見ていた。
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