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飼育✻販売のお仕事
第21章 生贄
葉月最後の金曜日、「ふぁみりあ」では、例のVIP会員限定のイベントが始まろうとしていた。
裏路地に位置する知る人ぞ知るエントランスに押し寄せて、秘めやかな宴を待つセレブリティ達が、気取ったフレグランスを染みつけ合って、ささめくように談笑している。
地下二階の多目的室は、既に特設ステージが出来上がっていた。
コの字に並べた簡易椅子の中央に確保された実演スペースは造花が囲繞し、スポットライトで照らし出してある。壁際に仕切りを立たせ、バスタオルを巻いた人間達を待機させる場所が区切ってあった。
「入場は、志穂と田口さんに任せるわ。結野さんと新崎さんは、お客様の誘導をお願い。田口さんは列が短くなってきたところで地下に戻ってきて。私はそれまでに売り物の一体目、のぞみの実演に関するお客様のアンケートをとっておく。時間になったら次のアンケートを誰かが配って、私はのぞみの集計結果を田口さんに説明するわ」
「店長」
「質問?」
「はい。二体目以降はともかく、のぞみのショーはイベント開会後すぐですか?アンケートの内容、その短時間で把握するのはちょっと……」
「だよな。里子、挨拶抜けてねぇ?いつも時間稼ぎしてんじゃん」
まおに続いて志穂が難色を示した。
二人の隣で、りつきと伊澄も眉根に皺を寄せている。
今夜の乱交参加型ステージは、客の要望に沿いながら従業員が売り物のセールスポイントを披露するのが目的だ。アンケートには可能な限り対応する必要がある。そこがおざなりであれば、通常の躾をただ公開しているだけになるのだ。
「問題ないわ。他に時間稼ぎがあるの。田口さんは、だからいつも通りの感じで進めて」