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飼育✻販売のお仕事
第21章 生贄
階上に向かった従業員らのはかなしごとが、いやに大きく里子の耳を打っていた。
りつきは変わらず里子を無邪気な目で見上げ、パステルピンクのツインテールを小さな肩に流していた。
「あれからどう?」
「はい、伊澄ちゃん達のお陰様で、何とかお父様も押しかけてくることはなくなって……。ただ、また振り出しに戻っちゃいました」
「週明けはどうなることかと思ったわ。連れ帰られなかっただけましじゃない」
「はい、……」
やるせなくさえなっていた、意固地の恋路を応援している態度を装う。
それまでりつきに振る舞ってきた里子のうわべは、いかにして取り繕っていたかも思い出せない。うわべがうわべであったのかも、今となっては甄別し難い。
りつきをよく知らなかった頃、彼女に地下二階の業務を教えようとした出勤初日、里子は不快に慄いた。まおがオスとじゃれ合うのさえ、その目に映してはならない気がした。