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飼育✻販売のお仕事
第21章 生贄

りつきの目に、美しいものだけを映していたい。
幻想だった。
美しいものなどこの世にはない。人が美しいと名づけるものこそ、我欲に塗り固められた偽のイデアだ。里子も、りつきに偽の安らぎを見出していた。
「りつき、……」
肩を引き寄せ、唇を近づけただけで従順な目蓋は静かに降りる。
里子はりつきに口づけたまま、エプロンの腰紐をといた。
「ぁっ、の、伊澄ちゃん手伝わないと……んんっ」
強引に塞いだ唇が、里子のキスに応え始める。里子はりつきの温度を啄ばみ、小音を奏でる喉を撫でては、そこにキスを追わせていった。
「里子さ……ぁっ、あっ……」
この体温を忘れない。
忘れたい。
里子はりつきを多目的室に引き戻した。
控え場では、バスタオル一枚に身体をくるんだ商品らが談笑していた。彼らは里子らが姿を見せるや、朗らかな顔を引き締めた。
「気にしないで。続けていて」
「いえ、もう開始時刻ですよね」
メスの一体、愛梨沙が背筋を伸ばし直した。同じく私語をやめた人間達も、彼女に倣った。
「あなた達の前に、一つ、出品したいものがあるの」
「え?」
「売り物じゃないけれど」
「里子さん、それって──…はぁぅっ」
里子はりつきのはだけたブラウスを引き剥がし、ブラジャーの留め具を引き千切らんばかりに外した。
ふるん、と、小振りの乳房が薄闇を僅かにぼかした。
「ぁっ、……!!」
築き上げるのは難関だ。
だのに、壊すことはあまりに容易い。…………

