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飼育✻販売のお仕事
第6章 初出勤は人間のお世話?!
「まずは餌。この棚よ。ネコはネコ、イヌはイヌ。袋に書いてある通りに与えていって。器にも名前を書いているから、まず最初に盛っていくの。水槽以外は、毎朝、水も交換」
「はい」
「量は、実際に今から目安を見せるわ。メモにとって覚えておいて」
里子は餌袋を持ち上げて、日干しの牧草を平皿に盛る。
農家直入の牧草は、市販のペットフードと違ってパッケージがない。付箋で「ウサギ(大人)」と付いていた。
「ウサギ……大入り?」
「大人。成人したウサギには、牧草が良い。高繊維で噛みごたえがあって、歯の健康にも適している。ちなみにこっちが仔ウサギ用。栄養価の高い草が配合してあるわ。小さい子にはこれを与えて」
「そう言えば、このお店、小さい動物少ないですね。毛並みも……他のペットショップに比べて自然体っていうか」
「保護犬や捨て猫、貰い手をなくしたウサギとか……そういうのを仕入れているから。引き取ってる、と言った方が妥当ね」
「なるほど」
「たまに生まれたての子も入ってくるけど、売れなくても最後まで面倒見てる。それが「ふぁみりあ」の理念。と言っても、……」
犬の写真のついたドッグフードを器に流し入れながら、里子は続ける。
これに関して説明は不要だ。器に目盛りが打ってあり、三色のあられがそこまで満ちると次の器にとりかかる。
「売れるに越したことはない。お互いのために。だから新崎さん達には、お客様とのコミュニケーションにも尽力してもらいたい」
「はいっ。あ、……」
「何か?」
「成人した動物って、そんなにぽんぽん売れるんですか。お花と一緒で、成長しきっちゃうと何ていうか……」
「売れ残りが続いた時のための手は打ってある。それに、販売用に養殖された小動物より自然に生まれた子達の方が、心身ともに健康。通のお客様はウチを選ぶわ」
りつきがペンを走らせていた。
二人の足場を、多様な食糧の盛ってある皿が埋め尽くした。
それから里子はあらゆる小動物を一種一種説明しながら、りつきに給餌の手本を見せた。